AI創薬技術GATEを用いたドラッグリパーパシング研究が国際学術誌に掲載

株式会社ジェクスヴァル
2026年9月25日

AI創薬技術GATEを用いたドラッグリパーパシング研究の論文が国際学術誌『Pharmaceuticals』に掲載

株式会社ジェクスヴァル(本社:神奈川県藤沢市、代表取締役:加藤珠蘭、以下「ジェクスヴァル」)は、グラフ深層学習技術 Graph Attention Autoencoder(GATE)2)をいち早く創薬に応用し、当社独自の次世代AI創薬プラットフォーム「RePhaIND® 1)」の中核技術として開発を進めてきました。このたび、GATEによる疾患治療薬の候補予測を、複数のデータで多層的に裏づける枠組みを構築し、COVID-19の治療薬候補の探索を事例として検証しました。本成果をまとめた論文が、MDPI社の国際学術誌『Pharmaceuticals』に2026年9月25日付で掲載されたことをお知らせいたします。

本論文は、当社チーフテクノロジーオフィサー(CTO)の中山裕介博士が統括し、東京大学先端科学技術研究センターの辻真吾特任准教授、近畿大学薬学部の細見光一教授らとの共同研究として実施しました。中山博士は本論文の共同筆頭著者および責任著者を務めています。

[論文の概要]
ドラッグリパーパシング(既存薬や開発段階の新規医薬品候補について、新たな適応症を探索すること)は、安全性などの情報がすでに蓄積された物質を出発点にできるため、開発初期のリスクを抑えながら迅速に医薬品開発を進められる戦略です。特に、新興感染症のように早急な対応が求められる場面で有効とされています。一方で、単一の計算手法による予測だけでは、臨床応用に向けて候補を絞り込むことが難しいという課題がありました。

本研究では、疾患・薬剤・遺伝子からなる知識グラフをGATEで学習させ、潜在空間上でCOVID-19と近い位置にある16の薬剤候補を同定しました。このうち12剤は、COVID-19またはその症状との関連がすでに知られていました。一方、残る4剤は関連の報告がほとんどなかったため、米国FDAの有害事象自発報告データベース(FAERS)を用いた不均衡解析と、LINCS 2020の遺伝子発現データを用いたパスウェイ解析によって多層的に評価し、最終的にシラスタチンとメゲストロールの2剤を有力候補として選定しました。シラスタチンについては、DPEP1阻害を介した作用機序の作業仮説も見出しています。

また、GATEの予測精度について、実際に承認されている薬と適応症の組み合わせを、候補として上位に予測できるかどうかで評価しました。その結果、正しく予測できた割合は、代表的な既存手法では約7割であったのに対し、GATEでは約8割にのぼりました。この結果から当社は、治療薬候補を幅広く探索する用途において、GATEが既存の手法よりも有用であると考えています。

なお、本研究の結果は計算科学的な予測に基づく仮説であり、有効性を示すものではありません。今後、実験による検証が必要です。

[本研究の位置づけ]
AI創薬には、新しい医薬品候補物質を設計する技術と、適応症や標的を探索する技術があります。本技術は、後者に属し、ドラッグリパーパシングを含む創薬テーマ・シーズの探索に特化しています。この分野では文献の解析や知識グラフの検索など、さまざまな手法が使われていまが、本技術は、知識グラフの構造そのものをGATEで学習して候補を広く探索し、リアルワールドデータと遺伝子発現データで裏づけて絞り込む点に特長があります。当社はGATEをいちはやく実際の創薬に応用しました。本論文は、この「探索」と「裏づけ」を組み合わせた枠組みを、COVID-19を例に査読付き論文として示したものです。

■論文情報■

掲載誌

Pharmaceuticals 2026, 19(10), 1522

論文題名

Multilayered Prioritization of Graph Attention Autoencoder–Derived Drug Repurposing Candidates for COVID-19

著者

Yusuke Nakayama*†, Shingo Tsuji†, Koji Yamamoto, Juran Kato-Suzuki, Kouichi Hosomi
(*責任著者、†共同筆頭著者)

出版社

MDPI(スイス・バーゼル)

掲載日

2026年9月25日(オープンアクセス)

DOI

10.3390/ph19101522

URL

https://www.mdpi.com/1424-8247/19/10/1522

中山CTOは次のように述べています。「本研究では、AIによる予測をリアルワールドデータとフェノーム解析で多層的に評価する枠組みを示しました。単一の解析では見つけにくい候補を、根拠を重ねて絞り込む考え方は、COVID-19に限らず、希少疾患など治療法の乏しい疾患にも応用できると考えています。本成果を基盤に、AI創薬プラットフォームRePhaIND®による探索をさらに進めてまいります。」

[Pharmaceuticalsについて]

『Pharmaceuticals』は、スイスのMDPI社が2004年から発行する、医薬品化学・薬理学分野の査読付きオープンアクセス国際学術誌で、PubMed・Scopus・Web of Science(SCIE)に収録されています。本論文は、同誌の「AI in Drug Development(AI創薬)」セクションに掲載されました。
URL:https://www.mdpi.com/journal/pharmaceuticals

[ジェクスヴァルについて]
ジェクスヴァルは、「Treatment Reaching the Unreached〜お薬を必要とするすべての人に〜」 という理念のもと、独自のAI駆動型ファーマコインフォマティクス技術からの価値創出を通じて、希少疾患などのアンメットメディカルニーズ(未充足の医療ニーズ)に対する革新的な医薬品の創出と開発に取り組んでいます。

■参考情報■
1) RePhaIND®について
Powered by RePhaIND® - EMPOWER・ACCELERATE・REVOLUTIONIZE Drug Discovery
RePhaIND®は、ジェクスヴァルが開発した独自のAI駆動型創薬プラットフォームで、革新的なファーマコインフォマティクス技術により新規医薬品候補の発見を可能にするものです(Revolutionary Pharmacoinformatics to Find IND (Investigational New Drug) )。

本プラットフォームは以下の3つの特徴を持ちます。

  • EMPOWER(創薬研究の強化):医薬品候補物質と疾患の潜在的な関係性を発見
  • ACCELERATE(開発の加速):従来の手法と比較して創薬プロセスを大幅に効率化
  • REVOLUTIONIZE(創薬プロセスの革新):希少疾患など、未だ満たされていない医療ニーズ(アンメットメディカルニーズ)に対する新たなアプローチを実現、創薬プロセスにパラダイムシフトをもたらします

2) Graph Attention Autoencoder(GATE)について
グラフニューラルネットワーク(GNN)は、様々な「つながり」のパターンを学習するAI技術です。とりわけGraph Attention Network (GAT)は、SNSにおけるリコメンデーションや、物流における配送ルートの最適化など身近なサービスで広く活用されています。なかでも当社が採用するGraph Attention Autoencoder(GATE)は、これまでライフサイエンス分野では、タンパク質の構造の予測などに限定的な応用にとどまっていた最先端技術です。当社はこのGATE技術を創薬プロセス全体に革新的に適用することで、新たな治療薬候補の発見を可能にしています。

本件に関するお問い合わせ: info@gexval.com
コーポレートオフィスヘッド 杉﨑敦史